心の世界地図『インテグラル心理学』の紹介

 心の世界に興味がある方にぜひ手元に置いて何かの折に参考書や地図のように用いることで、とても役立つ心の全体図の紹介です。

 一般にある、心に関するものは各分野ごとに限定されています。そのどれもが部分的で、地球における世界地図のような全体的な心の地図は見あたりません。例えれば世界の様々な国が自分の国の地形のありようだけを述べて、これが世界(心の全て)だと主張しているようなありさまなのです。

 例えば内陸に位置する国に住んでいるものにとって実際に海のある地に旅行するか、世界地図を見て海という物が存在するのを知識として知らなければ、海はこの世にありえないものとなります。それと同じに、心理学の分野でフロイトの精神分析には東洋思想的なものは含まれていません。また逆に禅仏教には西洋で派生した(自我・発達)心理学のような詳しいものはありませんし、否定さえしているのです。

 脳科学は脳内物質や脳内構造だけで人間心理を説明します。近年では脳だけが思考するのでなく腸内も思考し感じてもいるなどの研究もなされています。けれども脳科学は脳についての学問ですから、それを認めるわけにはいきません。また西洋で発達した心理学界の内輪でさえ幾つもの派に別れて、それぞれが反目し合ったり時には統合されたりと離反融合しているのが現状です。

 アメリカの思想家でもあるケン・ウィルバーはそんな世にあふれる心に関する考え方を精査して、それらをまるで世界地図のようにそれぞれに配置し位置づけました。身体的なものを越えた精神(スピリチュアル・霊性)的なものや脳科学も含めながら心のすべての要素を心全体の地図として位置づけたのです。

 以前紹介したことのある彼の名著『無境界-自己成長のセラピー論』のまえがきの中で心の全体図をまとめようと思ったきっかけをこう述べています。

 ・・・「膨大な種類のアプローチがある。精神分析から禅、ゲシュタルトから超越瞑想、実存主義からヒンドゥー教にいたる東西のさまざまな方法論が存在する。そのうえ、これらのさまざまな思想の大半は一見、お互いに矛盾し合っているように見える。苦しみの原因の診断が異なるばかりかそれを軽減する方法もまた異なっている。たとえばある心理学者やスピリチュアルな師の意見に同意したとしても、往々にしてその二人が全く意見を異にしている場合がある。このような多種多様な見方のなかから、わたしは全体を展望するひとつの統合化を試みた」・・・とあります。

 心の全体図としてみたインテグラル心理学の素晴らしいところは自分の立ち位置に捕らわれ過ぎなくなることです。グローバル化できるのです。彼の研究と実践からなるインテグラル心理学と名づけられた総合的心理学は心の全体(世界)地図として本当に良くできています。

 私はケン・ウィルバーの著書を地球における世界地図と同じような使い方をしています。ただ地図を眺めるだけでも海のある国もあれば海のない国もあるのだとわかるのと同じに、私の興味を持った分野であるユング心理学や禅仏教がケン・ウィルバーがその著書『無境界』の中でいう意識のスペクトルのどの位置にあるかを知るだけでも自分の立ち位置がわかって納得いきました。

 『無境界』では「意識のスペクトル」という考え方を基軸にして心の世界を説明しています。それは例えば、地球儀で地球という星全体を俯瞰しながら各地を見ていくこともできるのと同様に心全体を俯瞰しながら心がどのような動きをたどっていくかについて述べたものです。

 ケン・ウィルバーは最新の著作『インテグラル理論を体感する-統合的成長のためのマインドフルネス論』において、西欧で派生した心理学的な考え方をグローイング・アップ(成長の道-縦軸)と位置づけています。そして仏教など東洋的な思想をウェイキング・アップ(目覚めの道-横軸)として位置づけています。この考えは自我を中心とする西欧心理学と無意識を強調する東洋思想の相容れない対立的な考え方を統合しようとする新しいとらえ方です。

 詳細はぜひ本書を読んで深めていただきたいですが、「自我という実体はない」とする禅仏教界はインテグラル心理学のこの考え方を認めないかもしれません。私は悟っているわけではないので完全な悟り体験のある人の意見をどうこう言える立場にはありません。またケン・ウィルバーの考えのすべてに賛同できるわけでもありません。でもこの西欧思想と東洋思想を縦軸と横軸でとらえるまとめかたは、かなり説得力あるように思います。

 ケン・ウィルバーの著作は膨大なのでその全てを知識として習得するのは世界地図を丸覚えするようなものとなり無理があります。そのような学び方ではなくて例えばある国に旅行する際にはその国の地図を検索してどのような国かの概略を知るのと同じにケン・ウィルバーの著作を道しるべ的に参考にすればよいのです。

 心の道に迷ったとき、どこを旅しているかの道しるべとして大いに役立ちます。道に迷った時、地図を見て自分がいつの間にか他国に迷い込んでいることがわかればちょっと安心してひと息つくことができますね。さらには新しい未開拓の地としてそこの道行きを楽しむことさえできるようになります。それと同様に他の心理学やさまざまな心に関する一見矛盾するような考え方が見事に心の世界地図として配置されていることに気づければ、近視眼的に他国をありえないものとして否定することはできなくなり共存への道がひらかれます。

 あなたが心の世界の探索を始める時、ぜひケン・ウィルバーのインテグラル心理学をその道しるべとして用いてみてください。必ず、間違いのない本物の心のやすらぎの地や、心の成長の道を見いだすことができるはずです。

参照ページ

心の世界の道しるべ ~ケンウィルバーの意識のスペクトル
 「この苦悩から解放されたい」「癒やされたい」「私の可能性をもっと発揮してより良く生きたい」・・・私たちは心の傷の癒やしや、悩みの克服、能力開発や自己啓発など、精神的な課題に取り組む時、「一体どうしたらこの苦しみから解放されるのか」「これで...
心全体の構造図 フロイト・ユング・マインドフルネス・禅
西洋の自我を中心にした心理図 心の構造図として一般的なのは「意識は氷山の海面に出ている一角であって潜在意識は海中にある氷山のように大きい」という説明でよく知られる、フロイト・ユングの意識・無意識を元にした図です。19世紀後半にフロイトが無...

コメント

タイトルとURLをコピーしました