催眠療法といってもその技法には数多くの種類があります。例えば、過去に戻ってトラウマとかを探っていったりする「退行法」。傷ついた子供時代の心を呼び出して癒そうとする「インナーチャイルド法」。イメージトレーニングである「メンタルリハーサル法」やまた古くからあるシンプルな「暗示療法」。そして催眠の中で湧いてくるイメージを見ていく「イメージ面接法」。その他にもまだまだあります。
なぜこんなに多いのかというと、それはどんな心理技法でも催眠状態に入ったその中で行えばそれらが全て催眠療法といえるからです。逆にいうと実は催眠療法の技法は全て催眠状態でなくても心理技法として用いることができるのです。でも催眠状態で行う方がより有効な場合があるわけです。催眠状態に入ると覚醒時より自分意識が弱まり開放的になって余計なことを考えなくなります。それで心や身体が自然にいろいろ会得しやすくなるのです。また催眠中はイメージがよりリアルになるのでそれが心理療法面でとても役立ちます。時には「催眠に入って自分の気に入った風景を思い浮かべたら涙が出て楽になった」という人もいるくらいです。
例えば私は「クリアリングスペース」といってフォーカシングで用いられる技法で、日本では増井武士先生が考案した「収納イメージ療法」と同様なものを催眠状態の中で用いて、それがとても有効だったりしています。でもなんでもかんでも催眠でやる方が役立つとは限らないので、実際の心理面接の場ではクライアントが催眠療法をやりたい場合はもちろんそれを優先しますが、そうでない場合はクライアントとよく相談しながらその時々で催眠を用いたり用いなかったりと臨機応変にやっています。
対話を中心とする心理療法では時に、知的なやり取りに終始して理屈はわかったけど本当には(身体は)変わってないという状態に陥ったりします。けれども催眠状態に入り自分意識が弱まり開放的になるということは、その逆の状態である心と身体の一体感が強まることなのです。それで催眠を体験するだけでも、その後に何か物事にあたるときにはいろいろ迷ったり葛藤しないで心身一如となってやっていくコツを会得できたりします。
信頼できる治療者のリードで催眠状態に入って、そのイメージの世界を深めていくと、それまで心の問題で押しつぶされそうになっていた所から解放されて、深く休息できるようになったり、ゆとりを持つことができるようになります。また時には感動的なイメージとして心の深層からメッセージが届いてくるようにもなります。それらによって次第に心の傷つきや様々な葛藤などでバラバラになっていた心身が繋がり始めます。それまでうまく働かなかった自然治癒力の働きが活発になり、心身の流れは治癒の方向へと切り替わっていけるのです。
催眠療法に関して、より詳しくてわかりやすい説明がホームページのブログ『催眠療法とはどのようなものか その長所と短所』というページにあるので、参考になさってください。また催眠と催眠療法全般について詳しく知りたい方は『催眠の本質と新しい催眠療法』というサイトをご覧ください。