インナーセルフ療法

 インナーセルフ療法は、 心身の内のさまざまな動きをする各部をイメージ化して、そこと対話していくイメージ面接技法です。インナーセルフ療法は、悩みや問題を抱えてゆとりが持てない場合でも、カウンセラーなどの協力で、それを少しの間横において自分に向き合うとことができるようになれば、役立てることができます。

 その基本構造はとてもシンプルなので、慣れてくれば一人で自分の内の自己イメージとやりとりできて役立たせることもできます。インナーセルフ療法で、自分とほどよい距離感が保てるようになると他人ともそれができて、うまくやっていけるようになるという一挙両得の心理技法でもあります。

 名精神科医中井久夫先生はフランスの作家ポール・ヴァレリーの言葉を「わたしたちは自分と折り合いをつけられる程度でしか他人と折り合いをつけられない」というように翻訳しています。またそれに続けて「実際、ほとんど絶対に他者と通じ合えないようにみえる患者は何よりもまず自分と通じ合えていない」とまで言い切っています。逆に言えば自分と通じ合えるようになれば他者とも必ず通じ合えるようになるのです。インナーセルフ療法にはこのエッセンスが詰まっています。

 インナーセルフ療法では実際の子供時代に限定した(インナーチャイルド療法的)イメージだけでなく、より広く内界にある、どんなイメージでも取捨選択せず、例えば動物、人形、大人、や影など様々なイメージをまずそのまま受け止め、展開を見ていこうとします。そしてそれらをもう一人(一人以上の場合もあります)の自分(インナーセルフ)として、できる限り指示的でないアプローチをとるようにします。無理やりそうするわけではありませんが、最終的には自分の内面のどんな部分に対しても仲良く、程よい距離感を持ってやれるようになることを狙っています。

 自分の内面の一部の動きだけに振り回されないようになるためにそこを抜け出す工夫も含まれています。具体的には強すぎる自己否定を修正しながら自己肯定感を高めていけるような工夫をするので、ありのままの自分や身体への信頼感が高まります。慣れてくると、自分一人でリラクゼーションを深めたり自分を癒やしたりもできます。

 実は多くの人がそれと意識しないで、自己の内面とやり取りはしているのです。でもその多くは不満足で否定的なものです。知らぬ間に自分を責めたり、ありのままの自分でない、理想の自分を常に求めたりしているのです。それによって自己不全感が常に付きまとってしまっているのですが、そこには気づけません。インナーセルフ療法を用いると、そのような、ほとんど無意識に行ってきていた行為をあらためて意識化することになります。それに気づいた瞬間に、いかに自分に対して酷いことをしていたかを気づいて涙が止まらなかったり、あらためて自分を愛おしく感じる人もいます。

 より詳しく知りたい方は当相談室のもうひとつのホムペにある『インナーセルフ療法』のページを読んでみてください。

★参照ページ:『心の悩みや問題を乗り越えて行く道の地図と心理療法の実際