頭が考えているうちは深いリラクゼーションに入れない

一体どうなっているのかをまず見極める

 リラックスすることを身体レベルだけで考えるならことは簡単ですね。筋肉がほぐれるようにマッサージやストレッチ、軽いスポーツなどをやれば肉体は弛みます。でもそれだけでは充分ではありません。 なんといっても人は心のリラックス(安らぎ)が伴ってないと満足できません。実はそれがないと身体(脳内など)も心底は緩み切らないようです。

 この心のリラックス(安らぎ)は身体レベルのリラックスみたいに簡単にはいきません。心理学や宗教があるのは心のリラックス(安らぎ)が簡単に得られないものだからではないでしょうか。心の問題は目に見えないものであることから全て難題となってしまうのです。

 例えば眠りに入るには意識するしないにかかわらず(外界を信頼して)自分を投げ出し委ね(布団やベッドや世界に)リラックスする必要があります。ところがなかなか入眠できない時に「眠らなければ、眠らなければ、」と自分でやみくもに頑張ってしまう人(私も)のなんと多いことでしょう。それは例えば、荷物を積み過ぎて沈没しかけている船に、かえって荷物を積み込んでしまっていることになるのですが。

 焦りに嵌ってしまったらお手上げです。よい対策を立てるにはまず、問題となっているものをよく見抜かねばなりません。まず、眼に見えない心には盲点と逆説が至るところにあることを用心しましょう。そして心がなぜ安らげないのか、どうして緊張してしまうのか、一体どうなっているのかを心理学によってしっかりと見抜いていきましょう。

うつの心理分析(まじめな頑張り屋ほどギャップに苦しむ)

 最近ではさすがに休息や癒しを「悪」ととらえる価値観の人は少なくなりました。でも「充実した一日を送らねばならない」と思っている人は大勢います。そして一日をゴロゴロ寝てばかりで過ごしその夜には「今日はなんにもしなかったなぁ、マズかったなぁ、」と反省します。リラックスや癒しをするにしても、スパ銭に行ったりスポーツをしたりなど、なにか形になるものをやらないと充実した気がしないのです。

 ゴロ寝して心身は休息していたわけですがその調整作業は計測器には映らないので怠けてしまったと勘違いしてしまうのです。このパターンが強まってしまうと、身体は疲れているのに頭の一部が常に動き続け出します。それよって身体の方は休むに休めない状態に陥り、疲れはたまり続けます。そして焦燥感、無力感も強まりうつ状態となるのです。

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  うつになる人には真面目で頑張りやさんの上にとても謙虚な人が多いのです。時にそれらが高じて自己否定にまでなってしまっています。「自分は本来怠け者なので休んだりして自分を甘やかすと際限がなくなりそうなんです。それが心配で手放しで休んだことはないかもしれません」と言います。そこにはありのままの自分に対する信頼(自信)がありません。自己否定は強まって自責の念ともなっています。その自己否定は身体にも及び、そのため身体が疲れすぎてしまっていることを素直に受け止められなくなっているのです。

 この「自分と切れている」と呼べるパターンは外との関わりでも同じです。強い自己否定や自己卑下から他の人に合わせるばかりで自分を出せません。また自己不信は、周りからどんな良いことを言われてもループして結局自分はダメなんだ、というところに行き着いてしまうのです。それに更に追い討ちをかけるのが、うつ状態のその大変さを周りに解ってもらえないことからくる辛さです。「包帯を巻いてる人が羨ましい」と言われた方がいました。外目にはそれと見えないために家族にさえもわかってもらえなくて、病気レベルなのに治癒に向かうための(心の)居場所がありません。家族の中に「(何でも)気力でやり抜けば何とかなる」などの価値観を持っている人が居たりすると、ますます追い詰められてしまいます。このようなところからくる孤独感や自己への無価値観は計り知れないものとなって「消えてしまいたい。死んで楽になりたい」と思わずにはいられなくなるのです。

抱え環境の育成

 どの本だったかは忘れましたが、中井久夫先生の著書に「良く寝たなぁと感じる日が何日か続けばうつは治るだろう」とありました。うつ状態にあっては目覚めている時でも、脳はすでに半分くらい休息していそうです。でもそんな状態にあっても心(脳)の一部は不安や焦り、焦燥感から身体に歩調を合わせることができなくなっているのです。簡単にまとめすぎですが、心底深い休息に入れなくて中途半端にあがいているのが「うつ」状態といえるでしょう。とにかく深く休息しなければなりません。神田橋條治先生は名著『精神療法面接のコツ』の中で「精神療法を推し進める力の大部分は精神療法家の力ではない。患者自身や患者を取り巻く環境の力であるとわかってきた。・・・」とのべて抱え環境の育成を強調しています。

 「うつの人を励ましてはいけない」とワンパターンのように言われていますが、それはマラソンを一生懸命走り切った人に、もっと走れと言うに等しいからですね。当人ができるだけ心理的に脅威を感じないで居られるよう。そして守られていると感じられるような環境が必要です。これは考えてみれば身体的な怪我や病気の場合と同じなのです。私は時に、付き添いの方や家族の方にうつの事を説明する場合に「体が怪我や病気をした時と心も同じですよ」と言います。心が傷ついて出血していて動けない状態にあったりするということです。そしてその治療方法も「例えば症状や怪我の程度が酷けれ安静にしてお医者さんや看護師さんに全てやってもらうとかしますね・・・」などと説明していきます。

 補足:カウンセラー(心理治療者)としては先に述べたこととちょっと矛盾するような課題を忘れてはなりませんね。それはうつ状態に限らず悩み苦しむ人に接する場合に、神田橋條治先生が言うように「・・・悩み苦しむ能力と意欲との現れを察知したら、苦痛を除去する治療サービスよりも、悩み苦しむ能力と意欲とを尊重し活用する治療姿勢、をとるほうが正しい選択である・・・」という対応の仕方です。



「頭が考えているうちは深いリラクゼーションに入れない」への2件のフィードバック

  1. 悩み苦しむ能力と意欲とを尊重し活用する治療姿勢、をとるほうが正しい選択である・・・」
    という事をもっと詳しく知りたいです。 medaka

  2. 野坂昭如さんが昔歌ったCMソングに「ソクラテスもプラトンもみ~んな悩んで多くなった・・・」というのがありました。この歌のように人は悩み苦しむことによって心が成熟しますね。河合先生がよく言っていたエレンベルガーのクリエイティブ・イルネス(創造の病)『物語の意義について 河合隼雄 』ということです。

    例えばですが、通常だと友達に「自分はダメ人間だと思う」と打ち明けられたら「いやあなたにはこんないいところがあるよ」とか言ってダメ人間と思わないようになってもらおうと(苦痛の除去)しますよね。カウンセリングの場合、悩み苦しむ能力と意欲との現れを感じるようなクライエントが「自分はダメ人間だと思う」と言った場合はカウンセラーは「そう」と肯定します。その問題をもっと突き詰めて向き合って行こうとするわけです。これはカウンセリングの勉強会だとすぐ出てくるトレーニングですが、実はすごいことなんです。一歩間違えば本当にダメだから死んでしまおう、となるかもしれませんしね。

    器のちっちゃい私はスケールの違う河合先生のようにはいかなくて、目の前のクライアントの悩み苦しむ能力はどのくらいの程度だろう(汗)とかよく考えます。よくあるのは職場内の人間関係でギリギリのところに居るクライアントの場合に《もう休職や退職してもらって休む方(苦痛を除去する)を勧めようか。いやなんとか今の職場でやりぬいて力(心の成長)をつけてもらった方が今後のためにも良いのでは・・・》などと迷ったりすることです。

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