カウンセラーについて

 自分の深刻な話を簡単に返されたりすると、わかってもらった感じがしなくて、何も言わないで黙って居てもらったほうがかえって伝わった感じがしますよね。かといってカウンセラーはテクニックで黙っているわけではありません。クライアントの可能性を信頼できていると、カウンセラーはそれほどウロウロしない(うろたえない)で腰を据えて目の前のクライアントが表現する大変な状況をジックリ黙って、受け止め聞いていくことができます。そしてクライアントのことが解ればわかるほど簡単にはものが言えなくなってくるわけです。

 河合隼雄先生はよく「私はなにもしないことに全力を掛ける」と言っていました。一見すると無責任そうに見えるこの態度は実は信頼の究極にあるものです。クライアントの可能性を信頼するだけでなくこの宇宙全体を信頼しているからこそできることといえるでしょう。河合先生の著書『心理療法序説』にはそのようなカウンセリングの理想を「自然モデル」として述べています。

 河合先生に近い人から聞いた話ですが、河合先生は自分が関わったクライアントの事例を研究発表している際に、気持ちがいっぱいになってきて泣き出すことがしばしばあったといいます。私も河合先生が大泣きするのを目の前で見ました。心理関連の講演会で、その会を主催していた方が亡くなったと河合先生が壇上で言われ、その後何も話しださずに、いっぱいに涙をためて大きく泣いておられました。私はそれを見ただけで、カウンセラー(人間)として大きなものを学んだと思います。河合先生は、そのようにほんとに情が深い人でした。ですから外見にはなんにもしないように見えるその態度の裏で、人一倍クライアントに入れ込んでいたのです。目の前のその人に心は全力をかけていたわけです。

 河合先生は、私には理想といえば程遠いくらいの存在ですが、先生のように目の前のクライアントに全力をかける姿勢が私にはまだまだ足りません。頑張らねば。でも、亡くなられて既に5年になる先生ですが、思い出しているうちに、なんだか私が先生のクライアントになって見守ってもらいたい、とでもいうような変な気持ちが湧いてくるのです。うーん、まだまだのようです。



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